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祖母 

先日の朝方、突然に見知らぬ携帯番号から着信があった。
出てみると、福岡の祖母(96歳)だった。

「祖母ちゃんね、もう駄目かもしれない。もう足も動かないし、身体中が痛いんよ。」

自分はひどく驚いた。
いつも気丈で、一言たりとも弱音を吐いたことが無かった祖母。
常々、
「遠いから、祖母ちゃんに何かあってもね、遠くて大変だから(福岡に)来なくて良いから。」
と言っていた祖母。

数か月前までの祖母とはまるで別人のような言葉を聞いて心配になり、
休みを利用して福岡へと向かう事にした。

・・・・・・・・・・・

実は、祖母は数か月前に引っ越しをしていた。70年暮らした南区大橋を離れ、
宗像市の長男宅へ身を寄せたのだ。

祖母が引っ越し予定である事を母親から聞いた時、自分は強硬に反対した。

1)96歳で全く関わりの無い場所に引っ越すと、認知症が急激に進む可能性がある。
2)周囲に馴染みの友人も多く、来客も多いため、孤立する心配が無い。
3)認知症も無く、自立歩行できており、在宅医療を利用し、介護プランを見直せば、
 自宅での生活は充分可能。

しかしながら、医療にも福祉にも知識の無い母親は理解できなかったのか、
もともと母と自分とは関係があまり良くなかったので聞く気が無かったのか、
そのまま引っ越しが進められた。

「御祖母ちゃんが、そうするって決めたんだから。」

立場的に弱い祖母が、保護者である叔父から、
「一人暮らしで何かあったら大変だから」
という理由で引っ越しを強く勧められて、断れるはずは無かろうに。

・・・・・・・・・・・

宗像市に到着。初めて叔父の家を見て、嫌な予感がした。
斜面を切り出して造成された団地にあって、外は坂道ばかり。
自宅の門から玄関までのゆるく長い階段には、スロープさえ付いていない。


祖母に会った。
一人で歩けてはいたものの、フラつきが酷く、数か月前とは比べようが無かった。
自分の顔と名前以外の、殆どの事を覚えていなかった。
今年の夏に、自分の兄が祖母を訪ねてきたことも覚えていなかった。

とにかく叔父の家から連れ出し、近隣の和食屋さんで食事をした。
話をしているうちに、ポツポツと過去を思い出してくれてホッとした。

「歩こうと思っても坂道が多くて大変。」
「一日何もする事が無い。」
「自分がいると邪魔になるからデイサービスには行くけど、デイサービスの人達(利用者)が
 お嫁さんや息子さんの悪口ばかりを言っていて、聞いているのが辛い。」
「デイサービスの職員さんが、上手くもない絵を褒めてくれるから、一日写生をしている。」

ほんの二時間位の間だったが、ただただ沢山の話を聞いた。
そんな中で、ぽつりと祖母が言った。

「御祖母ちゃんね、どうなっても仕方ないと思ってるから、福岡に帰りたい。」

笑顔で聞いているのが辛かった。
何とかしてあげたいと思いながら、何も言えない自分が嫌だった。
こうなる事を予見していながら、防げなかった事を後悔した。
祖母にこんな思いをさせている事に、どうしようもなく苛立った。

帰宅してから、母親に電話をした。
予想通りの結果になってしまった事への文句と、他に道があったのではないかと責めた。

「御祖母ちゃんのためだった。」
「仕方なかった。」


母は言った。
叔父も母親も悪気が無いのは解るし、真剣に祖母を考えての結論であろうという事は理解できる。
いつも祖母を気にかけてくれてヘルパーの資格を取り、福岡へ通ってくれた伯母にも本当に感謝している。

それでも「御祖母ちゃんのためだ」と言われる事だけは我慢できない。
仕方なくも無いし、御祖母ちゃんのためでも無い。
自分たちの都合で引っ越しさせるべきではなかった。

自分はこの日の事を忘れないだろう。

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Name - さくら  

Title - 

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よろしくお願いします^^
2017.12.30 Sat 19:25
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